身近な人の名前が思い出せなかったり、お鍋の火を消し忘れたり。日常的生活の中で起こる「ふとした物忘れ」を経験するたびに、年のせいかと思う機会は少なくないでしょう。



主な物忘れの具体例

□ 時間や月日が分からなくなる
□ 身近な家族の名前が分からなくなる
□ 大事なものを忘れる(財布、通帳、印鑑、ほか)
□ 大事な約束を忘れてしまう
□ 料理のレパートリーが少なくなる
□ 火の消し忘れ
□ 外出の機会が少なくなる



 人間の脳は50代をピークに老化現象が始まります。老化現象から生じる生理的な物忘れであれば心配はありません。しかし、同じ物忘れでも病的なものから生じる場合があり、その最も多いのが認知症(にんちしょう)です。


 
 認知症(にんちしょう)とは、以前「痴呆症(ちほうしょう)」といわれた疾患で、脳細胞の萎縮や損傷によって、記憶や思考に障害を生じる脳の病気です。65才以上の人々の10人に1人が認知症を発症していると言われています。


同じ物忘れでも、老化現象と認知症は、どこが違うのでしょうか?

  老化が原因で起こる「物忘れ」は、行為の一部や事柄の一部を忘れるのに対して、認知症による物忘れは、体験したことそのものを忘れ、物忘れをしている自覚がないのが特徴です。忘れる度合も徐々にひどくなります。


老化による物忘れ
認知症(にんちしょう)
体験した行為・事柄の一部を忘れる。物忘れをしていると自覚がある。 体験したことそのものを忘れる。物忘れをしていると自覚がない。
(例)朝食で食べたものを思い出せない。 (例)朝食を食べた事を忘れている。
物忘れの症状は、ひどく深刻になることはない。 物忘れの症状は、徐々にひどく深刻になる。



認知症を引き起こす病気は?

 認知症の原因は様々ですが、皆様もご存知のアルツハイマー型認知症という病気がその半数を占めています。また、脳出血や脳梗塞が原因でも痴呆症が起こります。アルツハイマー型認知症では、初期の症状は物忘れが中心ですが、数年をかけて徐々に進行すると、着替え、入浴、食事などの日常動作に支障を来たり、徘徊の症状がでたりします。脳の萎縮がさらに進むと身体機能が衰え介護が必要になります。



 このアルツハイマー型認知症や血管障害型認知症は、基本的には完治が望めない病気です。しかし、現在は症状を緩和させる治療や進行を一時的に遅らせる薬があります。下記にも述べますが、認知症は原因によっては完治が望める場合もあります。まず、専門医による適切な診断を受けて下さい。


 日本には、依然として世間体を気にしたり、治療法がない病気と思い込んで、医療機関への受診を"ちゅうちょ"するケースが少なくありません。確かに、認知症の告知は、ご本人やご家族にとって、受け入れがたい問題であり、人間の尊厳に関わる問題です。


 医師として、もっと早く治療を行っていたら、ここまで症状が急速に進まなかったのではないか。と改めて認知症の早期診断と治療の大切さを思い知る機会が間々あります。医学の進歩は目覚ましいものです。認知症かもしれないと日々不安を抱えて過ごしている方や、そのご家族には、次の3点を強調したいと思います。



(1)早期に専門医による適切な診断を受けることが大切。
(2)認知症は治療により完治するものがある。

(3)完治は望めないが、治療により症状を改善したり進行を遅らせることができるものがある。



認知症の治療について

 認知症の原因には様々なものがあり、治療可能なものと治療不能のものがあります。当院の場合、治療可能な疾患については補充療法、手術や入院治療の必要な疾患については専門医、連携医療機関へ責任を持ってご紹介いたします。


完治可能な認知症

補充すれば治る認知症

ホルモン異常(甲状腺機能低下症)、ビタミン欠乏(B1,B12欠乏)はそれぞれ不足しているものを補充すれば治ります。
手術をすれば治る認知症 慢性硬膜下血腫、正常圧水頭症、脳腫瘍などそれぞれの原因にあった手術により完治が望めます。
適切な治療により治る認知症 脳炎、髄膜炎など



完治不可能な認知症

脳血管性認知症

前頭葉を主とした脳血流不全、つまり脳に栄養を供給する血液不足により機能が低下しおこる認知症です。血液不足の原因は動脈硬化による血管の閉塞、狭窄で、CTをおこなうと小さな脳梗塞が認められることが多いです。また動脈硬化をすすめる生活習慣病はリスクファクター(危険因子)になります。
アルツハイマー型認知症 認知症の約半数を占めると言われています。脳の神経細胞が急速に死滅し、記憶力や思考力の大幅な低下、最後には人格も崩壊していく原因不明の病気です。CTを行うと脳全体が縮んで(萎縮)います。

 

正常な脳の
CT
脳血管障害型
認知症の脳CT
慢性硬膜下血腫型
認知症の脳CT
アルツハイマー型
認知症の脳CT



物忘れ外来のご紹介

 認知症の原因には様々なものがあり、治療可能なものと治療不能のものがあります。当院の場合、治療可能な疾患については補充療法、手術や入院治療の必要な疾患については専門医、連携医療機関へ責任を持ってご紹介いたします。


問診について

 専門医がご本人、ご家族よりお話を聞き疑われる疾患に合わせ検査を行います。 時間や月日が分からなくなる、 身近な家族の名前が分からなくなる、大事なもの(財布、通帳、印鑑、ほか)、 大事な約束を忘れてしまう、料理のレパートリーが少なくなる、火の消し忘れ、外出の機会が少なくなる、など思い当たる事があれば受診をお勧めします。



検査について

 CT検査、知能検査、生活習慣病の関わりが考えられる場合、採血、フォルムによる動脈硬化診断などを行います。


 完治不可能な疾患でも進行を遅らせることは十分可能です。動脈硬化が原因である場合、生活習慣病が深く関わっておりこの治療を行うことで進行を抑えたり、アルツハイマー型認知症の場合、治療薬がありこれにより進行を抑えることが可能です。

 



医療法人吾勢会 指田医院
院長 指田純

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